三題噺(銀座・サラリーマン・ハンカチ)-2
着ぐるみとお父さんはつらいよ
8月の土曜日、丸山は息子に起こされた。もう10時過ぎだ。この日、息子をアンパンマンショーに連れていく約束をしていた。地球温暖化か、ヒートアイランド現象か、気温は朝から30度を超えている。水を飲んだ。二日酔いの体に吸い込まれていく。
息子は妻にせかされ着替えを始めている。既に息子にはタオルと水筒まで用意している。丸山も急いだ。ショーの開演は13時、場所は銀座M百貨店だ。最寄りの都営浅草線の戸越駅から東銀座までは20分位の行程だ。
「ホントの銀座じゃなくて、戸越銀座でやってくれよ」
とは口に出さないが、身勝手な考えが二日酔いの重い頭をよぎる。
M百貨店で昼食にした。夏休みだ。食堂には丸山と同じ年くらいの父親と息子の組み合わせが多い。
「みんな、ショー目当てだろうか? これは大変」
早々に食堂を引き上げ屋上へ向かった。ハンカチで汗を拭うが用をなさない。妻はしっかり息子にはタオルを持たせた。
「愛情の差だろうか? つまらないやっかみだな」
さあアンパンマンショーの開幕だ、とうとう始まった。いつものようにバイキンマンが意地悪をする。少年たちがワーワー騒ぐ。その声援が大きくなるほど暑さが増す。もう最高潮だ。持っていたソフトクリームはみるみる頭が丸くなり、土台から崩壊しつつある。
丸山は真夏の突き刺す光線に顔をしかめながら、不用意にもつぶやいてしまった。
「この暑さで着ぐるみか。アンパンマンもつらいな~」
しかし、その声が息子に聞こえてしまった。
「お父さん、つらいのはアンパンマンじゃないよ」
「中に入っているサラリーマンだよ」
8月の土曜日、丸山は息子に起こされた。もう10時過ぎだ。この日、息子をアンパンマンショーに連れていく約束をしていた。地球温暖化か、ヒートアイランド現象か、気温は朝から30度を超えている。水を飲んだ。二日酔いの体に吸い込まれていく。
息子は妻にせかされ着替えを始めている。既に息子にはタオルと水筒まで用意している。丸山も急いだ。ショーの開演は13時、場所は銀座M百貨店だ。最寄りの都営浅草線の戸越駅から東銀座までは20分位の行程だ。
「ホントの銀座じゃなくて、戸越銀座でやってくれよ」
とは口に出さないが、身勝手な考えが二日酔いの重い頭をよぎる。
M百貨店で昼食にした。夏休みだ。食堂には丸山と同じ年くらいの父親と息子の組み合わせが多い。
「みんな、ショー目当てだろうか? これは大変」
早々に食堂を引き上げ屋上へ向かった。ハンカチで汗を拭うが用をなさない。妻はしっかり息子にはタオルを持たせた。
「愛情の差だろうか? つまらないやっかみだな」
さあアンパンマンショーの開幕だ、とうとう始まった。いつものようにバイキンマンが意地悪をする。少年たちがワーワー騒ぐ。その声援が大きくなるほど暑さが増す。もう最高潮だ。持っていたソフトクリームはみるみる頭が丸くなり、土台から崩壊しつつある。
丸山は真夏の突き刺す光線に顔をしかめながら、不用意にもつぶやいてしまった。
「この暑さで着ぐるみか。アンパンマンもつらいな~」
しかし、その声が息子に聞こえてしまった。
「お父さん、つらいのはアンパンマンじゃないよ」
「中に入っているサラリーマンだよ」
2012-09-01 21:54
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